雑司が谷鬼子母神再訪:中娘・成人式

大学が茗荷谷、卒後の職場が池袋だったこともあり、ご近所の雑司が谷鬼子母神にはなんとなく親しみがあった。鬼子母神の伝説も気に入っていたし、子沢山を象徴するザクロの意匠も素敵。そんなわけで、上娘を授かったときには、迷わず雑司ヶ谷鬼子母神で戌の日の安産祈願をしていただいた。その一ヶ月後くらいだったろうか、一歩間違えれば母子ともに命を落としかねない大変なことが起きてしまったにもかかわらず、様々な幸運に恵まれ困難を乗り切って、無事満期産で元気に上娘は生まれて来てくれたのだった。
ありがたや、それもこれも、鬼子母神様にお参りしていたからだ、ということになり、我が家にとって、雑司ヶ谷鬼子母神は特別な存在となった。

以来、上娘から始まって我が家の子供たちは全員、安産祈願、お宮参り、七五三と、すべて雑司ヶ谷を訪れてはご祈祷をしていただいてきた。

上娘が成人式を迎えたときは、浪人中ということもあり、また本人の希望もあって、特に振袖を作ることも無く過ぎた(過去日記を探しても成人式のせの字もない!)が、中娘は、着物に興味を持ち、振袖を着たいと言い出した。そこで一昨年の夏くらいから探し始めたが、背が低いのでレンタルではなかなか気に入った着物が見つからない。近所の呉服屋さんで、今は着物の価格が下がり、30万円くらいでそれなりの品質の振袖が一式誂えられると聞いて以来、すっかり誂える方向で進み、最終的には京友禅のお店の展示会に行って、たくさん合わせてみた中から気に入った反物で誂えることになった。(30万では収まらなかった。)

そして迎えた成人の日。人が恐い中娘は、同年代の人がたくさん集まる区の式典には出席せず、振袖を着て家族でお出かけしたいと言うので、それならと、雑司ヶ谷鬼子母神にみんなで行って、二十歳の報告と御礼参りをいたしましょう、となった。

当日4時起きで美容室に行く新成人たちもいるというのに、本人は9時起き、鬼子母神近くにある池袋の美容院で、ヘアアップ・メイク・着付け3点セットの予約時間は11時半。何とものんびりしたスタートだった。
まず私が美容室につきそい(私は家で着物を着てから出かけたので本人よりずっと早起き)、1時間ほど時間をおいて家人が美容室にお迎えに来て、上娘は池袋経由で現地へ、副都心線の定期券を持っている息子と末娘は雑司ヶ谷から現地へ。途中、兄とはぐれた末娘が最後に到着してやっと鬼子母神に家族全員集合した。

お堂に入り、御祈祷の申し込みをする。申込書には御祈祷メニューのようなものが書いてあり、チェックを入れることになっている。御礼参りという項目はなかったので、安産祈願からお宮参り、七五三もこちらで御祈祷していただいたので、まずは今日は成人の日を迎えた御礼参りなのですが、と受付の方に説明すると、では御礼参りとあと何かご希望はありますかと言うではないか。該当しそうなのは、身体健全か心願成就くらいだったので、その二つのどちらにするかちょっと悩んだが、二十歳だから心願成就にする、と中娘。(私は秘かに良縁祈願とかあるといいなと思ったけど、なかった!(笑))

祈祷を担当するお坊さんは、息子と同じかそれより若いんじゃないか?というくら若いお坊さん。
本堂に入り、ご本尊の真ん前中央に中娘が座る。中娘の後ろに家族5人が横並びで座る。人数多い。

お坊さんが中娘の頭上で火打ち石をかちかちと鳴らし、なにかお唱えになる。そのあと左手の方に姿を消すと、明かりが付き、ご本尊の前に下がっている小さな緞帳がさっと上がった。そして日蓮宗らしい、とてもにぎやかなお経が始まった。

中娘がとちゅうから体をゆらして泣いているように見えたので、感動して泣いてるのかなぁなんて思っていたら、違った。私は一番端にいたので聞こえなかったのだが、お坊さんがお経を途中で間違って止まってしまったとき、「あ!まちがえたっ!」と言ったのが聞こえて、おかしくて笑ってしまったのだと。

最後にもう一度、お坊さんが中娘の前に戻ってきて火打ち石を打ってなにごとか唱えると、御祈祷が終わりだ。こうして無事に御礼参りと身体健全(申込書にはチェックしてなかったけどそれも御礼参りだと自然にこの項目も入るようだ)、心願成就祈願の御祈祷をしていただいて立派な御札をいただいて本堂を後にした。

本堂から出ても、「あ!間違えたっ!」を思い出しては笑っていた中娘さんでした。