一週間以上前になってしまったが、22日日曜日は、先輩Uさんの手引きで、某寺院茶室で行われる夜咄の茶事にお客様として勉強させて頂く機会に恵まれた。
某寺院の茶道教室指導者Yさんと、Uさんご夫妻が共同で、こうしたお稽古の場を提供してくださるのだった。
今回はY社中のお弟子さん3名(女性2名男性1名)とUさんチームから私とTさん(男性)の2名、総勢5名がお客役として参加。
亭主方は、UさんとKさんがお料理・お水屋を担当し、Uさんのご主人が半東、Yさんが亭主という盤石の体制。
4時半席入りと伺っていたので4時には現地に到着する。寄りつきは電灯の明かりだったけれど、待合からはもう夜咄の茶事の世界。待合の床の間には和蝋燭が1本立ててあり、「こもかぶり乞食じゃないぞ寒牡丹」と書かれた画賛のお軸。フクロウのロウソク立てなどもお部屋の隅に置いてある。手あぶりの火を囲みながら、キセルが2本載せてある莨盆を拝見していると、半東のUさんご主人が汲み出しとして生姜の香りがする甘酒をお持ちくださる。
確かお詰めが給仕すると教本にあったと思ったので、私がみなさんの前に甘酒をお出しする。飲み終わるとお盆に茶碗を戻し黒文字を載せて給仕口へ出しておく。そして揃って外の腰掛待合へ移動。まだ日が落ち切っていないので仄明るい外だったが、枝折戸手前の腰掛に座ると、向こうに見えるお茶室の躙り口が開き、ご亭主が出てこられる。蹲を改め、桶の水をざーっとあける音がすると、お正客が手燭の交換に立ち上がる。私たちも続いて後ろに並ぶ。交換した手燭を持ってご亭主が茶室に戻られ躙り口が閉まると、今度は私たちが蹲に進む。私はお詰めなので枝折戸をしめて鍵をする。手水を使い、雁行しながら躙り口へ。躙り口から茶室に入るのは二十○年ぶりだわ、と思いながらお詰めの私は最後に音を立てて戸を閉める。
「無事是貴人」という軸のかかった床を拝見後、手職を持って立たねばならないのを忘れて一度立ってしまったが、もう一度床前に戻って手燭を取ると、茶道口へ。手燭の向きを変えて置いてから改めてお釜の拝見。
定座に座り、茶道口を注目していると、なんとご亭主は茶道口ではなく給仕口を開けられた!
今回の茶室では手燭は給仕口に置くべきものだったのか。
お詫びして置き直そうとすると、もう一度閉めて開け直してくださった。私が置き直した手燭をご亭主が引くと、正客からどうぞお入りをの声とともに、ご亭主が席に入られる。そして正客から順番にご挨拶。お詰めはわざわざご亭主から「今日はお手数をおかけしますがよろしく」とお言葉を頂戴する。初っぱなから間違えてしまって申し訳ない!
その後、前茶、お炭と進み、ゆらゆらと揺れる蝋燭の火にも徐々に目が慣れてくる。特にお炭手前は、短檠(たんけい)の前にさらに手燭を置いて行うので、ずいぶんと明るく感じられる。お釜の名前は忘れてしまったけれど、五徳が大きな釘の形をしていて面白い。どこかのお寺の釘をそのまま持ってきたものだとおっしゃっていたけれど、どのお寺だったか失念。というかお道具の説明はほとんど忘れてしまった。情けないですが。
お炭が終わり、香合の拝見が済むと懐石。
先日、Uさんからお献立を教えていただいたので、記録として残しておく。
汁…白味噌仕立て、カボチャ白玉豆腐
「かぼちゃ白玉団子」は末娘と一緒に作ったことあるけれど、このかぼちゃ白玉豆腐というのは豆腐の水分を使って白玉粉を練り、そこにかぼちゃの裏ごしを混ぜたのだろうか。ほんのり甘くて柔らかくておいしいお汁。小豆が一つ入っていて、冬至を意識したお献立。
向付…焼き椎茸、焼貝柱、軸三つ葉の和え物柚風味
焼きしいたけと貝柱の食感が似ているのが面白いと感じた。
煮物碗…すまし仕立て鳥饅頭薄氷
この煮物碗が今回Uさんが最も力を注いだものらしく、蓋をあけると、うすーく切った大根がかぶせてあって、三つ葉が乗っている。その下に鶏饅頭がはいってるのだが、赤い人参で小さな星をかたどったものと松の実が載せてある。薄い大根から赤い星とおまんじゅうが透けて見えるのが美しく、お味もとてもよかった。お年寄りでも離乳食の赤ちゃんでも食べられそうな、やわらかくてやさしいお味。
焼き物代わり…炊き合わせ(蛸、里芋、こんにゃく、水菜)
教科書には冬場は寒いので鍋物を献立に足したりすると書いてあったけれど、まさにこれは鍋物。ご亭主がまだぐつぐつ言っている土鍋をお盆に載せて運んできてくださった。本来は客に預けるものだけれど、熱いのと取り分けるのが大変ということで、ご亭主手ずから取り分けてくださった。タコが若干大きかったけれど柔らかく煮えていて、里芋もおいしい!こんなに薄味なのにこんにゃくにしっかり味がしみているのも驚き。あとでお料理方に入られていたKさんに聞いたところ、前日Uさんがこんにゃくも里芋もタコも全部別々に味を付けて煮てきてくれていて、当日はお出汁を張ったお鍋に入れて温めただけだったとか。どれほど手がかかったことか。改めて感謝。
預け鉢…小松菜くるみ和え
白和えなのかなと思っていたけれど、くるみ和えだった!
小吸物…リンゴ。リンゴが一切れ入っていて、さわやかな甘みと酸味のお吸い物。
八寸…とこぶし・長ねぎ豆腐味噌漬け
千鳥の杯を交わすときの酒の肴。長ねぎがちょうどいい具合に焼いてあって、こういうのは家でも作ってみたいなぁ。千鳥の杯は、一生懸命予習した割には、ご亭主の右側に燗鍋を置かなくちゃいけないところ、自分の右側、つまりご亭主の左側に置くという間違いをしてしまった!手燭を返す時も、相手の右、つまり自分にとっては左側に置いてあげなければいけない。
こういうのは、慣れないうちは、頭で考えて置く位置を常に確認しながら動作しなければと思った。
香の物…姫大根、牛蒡、蕪
色合いがとても美しく、おいしいお漬物でした。
お膳を受け取るときは、客が一膝進んで受け取り亭主が一膝下がって礼をする。逆にお膳を渡すときは、客が一膝進んで亭主に渡したら、客が一膝下がって礼をする。
お詰めは食器を預かったり、給仕口に戻したり、いろいろお仕事があるが、予習を万全にしてきたTさんのおかげもあってほぼほぼできた、と・・・思う。
懐石が終わって、お菓子が運ばれてくる。柚子饅頭だった。おいしい。お菓子を頂くと中立。外に出ると、さっきはまだ明るかったのに、真っ暗になっていて、夜空に星がまたたいている。足元行灯が待合への道を教えてくれている。ああ、これが夜咄なのねー、と感動しつつつ、最初の待合に戻り暖を取り(手あぶりの炭が赤くなっていてとても暖かい)、そろそろという頃に再度腰掛け待合へ。鳴り物は銅鑼ではなく喚鍾(かんしょう)。なんとなくもの寂しいような、除夜の鐘を思い出すような音でもあった。
後座の床は掛け軸がはずされて通常は「石菖」が置かれるのだが、なんと枝ものの花が入れられている。でも暗くてよく見えない!
濃茶点前が始まると、この暗さにもだんだんと目が慣れてくる。でもお花はよく見えない。お濃茶が正客のところに出されるとお濃茶の茶碗とともに、手燭も一緒にまわってくる。正客は床の前に座っているので、明かりが床の前に来ればお花が見えるかと思えばさにあらず。逆光(?)でやっぱり見えない。L字型にすわる5名の客の最後、床から見ると対角線の向こう側、私の位置に手燭が回ってきたときに、明かりが床から遠ざかったにもかかわらず、逆に床の方に明かりが広がり、枝の影が大きく広がり、お花が見えた!これにはちょっと驚いた。蝋燭の光と影の面白さも感じながらお濃茶をいただいた。
夜咄はこのあと続きお薄になる。正客は自分に点ててもらったお茶を次客にすすめて、先の茶入、仕覆の拝見を請う。ここが夜咄では大切なところだ、とYさんが教えてくださった。お干菓子は、「霜ばしら」と雪の形の落雁(名前は失念!)。
充分に薄茶をいただくとお正客はお仕舞いください、とご亭主に声をかけ、今度は棗と茶杓の拝見を請う。四器そろったところで、やっと手にとって順番に拝見していくのだ。
拝見物を引きに出たご亭主とお正客の会話を聞きながら、次は止め炭かな、と思っていたら、時間の関係か止め済みは省略され、夜咄の終わりの挨拶になった。
充分にお礼を言い、もう一度お床と炉を拝見し、名残惜しいけれど、躙り口から外に出た。末客は音を立てて躙り口の戸を閉める。少し待っていると、亭主が躙り口を開けて、顔を出された。ここでは、無言で総礼、と教本にはあったけれど、つい、ありがとうございました、と口について出てしまった。
帰り道、東の空の向こうにお丼のようなお月様が明るく見えた。星も美しかった。
夜咄の一々が全部まるで夢のよう。