「 2019年01月 」一覧

初めての亭主

大先生のお稽古場をいったんやめるにあたって、日曜クラスのU先輩から、しばしのお別れに日曜クラスの初釜(飯後の茶事と同じような形式)の亭主をしないかと薦められていた。その初釜が昨日無事に終了した。

いつもの初釜は、U先輩がお料理から亭主から、お道具ももちろん、すべて整えてくださり、私は半東だったり水屋だったりしたのだが、今回は私が亭主ということで、お料理は一品は作った方がいいわね、と言われ、主菓子はお正月恒例の花びら餅と決まっていたので、薄茶用の干菓子を二品探してみる?と言われ。
はいはいと、すべてお言葉に従った結果、まずは京都鍵善良房から通販で和三盆糖の「鶴ト亀」さらに、1月7日に新宿高島屋、新宿伊勢丹、日本橋三越、日本橋屋長兵衛などをめぐって最終的に末富のお菓子をゲットすることができた。お料理一品は、ふだんお弁当でも作っている鶏の八幡巻きを作ることにして、ほかにも自主的に、お炭(増田屋さん)、抹茶(一保堂の亥昔)、お酒(神亀)も私の方で準備した。

手前が鶴ト亀、奥が冨久袋

さて、当日を迎えて、お客様は日曜クラスのお弟子さんなど6名様。
お茶事の始まりに行う、“亭主が蹲に桶でざぁーっと水をあけたあと、しおり戸を開けて一歩進み、無言のまま主客で礼をかわす”というのを是非やってみなさい、とU先輩に言われ、桶が無いのでバケツで蹲に水をざーっとそそぎ(案外水が散る)、しおり戸のつもりで玄関の引き戸(純和風家屋)を開けて、玄関ホール=寄り付きにいるお客様に恭しく無言でおじぎをした。しかし、お客様もほとんど初めてでよく意味がわからず、手がかりを残して戸を閉めて亭主の私が去っても、ずーっと寄り付きから動かない。あんまりお客様が来ないので、U先輩が水屋から寄り付きまで戻ってきて、座っているお弟子さんたちに「蹲を使って、さっさと席入り!」と一喝。こうして私の初めてのお茶事が始まったのだった。

席が定まって茶室が静かになったのを見計らって襖を開け、まずは御挨拶だ。「昨年急にお稽古をお休みせねばならなくなったので、しばしのお別れの御挨拶と今までの感謝の気持ちを込めて、今日は心を込めて亭主を務めさせて頂きます、云々。」
挨拶が済むと、寄り付きや庭、蹲、お床などについて問答がある。早速、正客から、寄り付きの汲みだし茶碗は?と質問されしどろもどろなワタクシ。朝、U先輩から、汲みだし茶碗はエゴウライよ、と教わっていたのに、本番で緊張している私は、エ、エ、エ、までしか出てこない。結局「えーっとすみません、ど忘れしました(^_^;)」と言って勘弁してもらう(失敗その一)。お床の説明はかなり詳しく勉強していったので何とかなった。卓飾りもとても絵になっていて、お客様一同とても喜んでくださる。

砂張の花入れは、箱にわざわざ「卓下」と書かれている
だけのことはある絶妙なサイズ。花は本阿弥椿と柳。

炉の茶事はお食事の前に初炭手前を行う。
昨年から、長板総荘りで行うと言われていたので、12月から特別に長板で炭手前や濃茶手前のお稽古していたのだが、初釜二日前に、長板から高麗棚に変わったからよろしくねー!とU先輩に言われたものだからさあ大変。前日の道具出しに参加させてもらって、初めて高麗棚(高麗台子)を拝見し、一夜漬けのにわか勉強で臨んだ初炭手前。台子のお点前は元々苦手というか、めったにしたことがなく、不安材料だったところ、案の定、ふだんの炭手前とお茶事の炭手前の違いでもある、最後に棗を持って出て台子の上に置き、釜の蓋を清めて切るという一連の動作をすっかりすっぽり忘れてしまったのだった。(失敗その2)

黒の高麗台子に映える白の皆具。紀宮親王のお印ヒツジグサの意匠だそうです。

お祝い膳はほとんど水屋の方(日曜クラスのお弟子さん)とU先輩で準備してくださったので、私は運ぶだけ。お雑煮のお餅がなかなかやわらかくならず、U先輩に、ちょっとおしゃべりして間を持たせて!と言われてまた茶室に戻って、八幡巻きは私が作りましたとお話すると、デパ地下で買ってきた物かと思った、と驚いてくれて、みんな優しい(^_^;)。

お菓子は銘々皿でお出しし、中立へ。(そこで初めて炭手前の失敗に気付く。)
棗と茶入を荘り、濃茶の支度を調える。

記録が途中ですが、とりあえずアップしておきます。

平成三十一年一月十三日 初釜 会記
掛け軸 のどけさや むかふ日ごとの朝かすみ みどりそひゆく 春のやまのは
     内大臣家煕(近衞家煕) 懐紙書き
卓飾り 卓 桑子卓
    香炉 萩焼
    花入れ 砂張
    花  本阿弥 柳
釜   常什(裏鏊釜)
炉縁  松島蒔絵
棚   高麗台子
皆具  ヒツジグサ 大倉陶園
茶入  瀬戸 芋の子(江戸中期ごろ?) 鵬雲斎箱
棗   宝尽蒔絵平 鵬雲斎在判 雅峰造
茶杓  歌銘 若恵比寿 淡々斎作
     「釣り上げし鯛を魚の福の神 えびす顔こそ 見まくほしけれ」
主茶碗 赤楽 嶋台
薄茶碗 紅白梅図 茜窯
主菓子器 塗銘々皿 治兵衛造
主菓子 花びら餅 亀屋万年堂
干菓子 鶴ト亀 鍵善良房
    冨久袋 末富
    辻占  森八
炭道具 炭斗  菜籠(唐物)
    羽   犬ワシ
    釻   ネジ 与斎造
    火箸  砂張 淡々斎箱
    灰器  焼貫 惺入
    灰匙  少庵好 南鐐 浄益造
    香合  面箱 鈍阿造
その他 燗鍋  五郎左衛門造(享保年間)